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100年を彩った品種たち

Episode 05 ブロッコリー
世界シェア50%以上を誇る

ブロッコリーはキャベツやカリフラワーと同じアブラナ科で、原産地はヨーロッパ地中海沿岸と考えられています。ローマ帝国時代には野菜として栽培され始め、中世になってヨーロッパ中に広がりました。しかし、キャベツやカリフラワーに比べ、マイナーな野菜で、なかなか日の目を見ることはありませんでした。

商業的な生産が本格化したのは、ヨーロッパではなくアメリカのカリフォルニア州です。1923年にイタリアから移民してきた生産者が本格的な栽培を始めたといわれています。そして第二次世界大戦後アメリカ軍のヨーロッパ、アジア諸国への駐留に伴い世界中に広まりました。日本で普及し始めたのは1960年代後半で、比較的新しい野菜といえます。

当社が世界中でもっともたくさん種子を販売しているのは、実はブロッコリーなのです。まだまだ世界的には発展途上の野菜ですが、その市場で50%以上のシェアを持っています。その歴史は1970年代の初め、固定種の栽培が主体であったアメリカで、「グリーンデューク」という早生のF1品種を発表したことに始まります。「グリーンデューク」はそれまでの品種に比べ花蕾の品質が格段に優れており、しかも収穫期がそろうために、収穫のために畑に入る回数が半分以下になりました。同時期に低温流通や冷蔵庫が普及したことも生産拡大に寄与しました。この品種の普及により、大規模生産が可能になったわけです。20年以上前の話ですが、アメリカの大手野菜生産会社の玄関に「グリーンデューク」の大きな写真が掲示されていて、「当社はこの品種によって大きくなった」と書かれていたそうです。その後1980年代の「ショウグン」、「マラソン」など中生品種の販売により、最高80%のシェアを確保していた時期もあります。

グリーンデューク

マラソン

ショウグン

国内では1980年に発表した「緑嶺(りょくれい)」という栽培しやすい品種の普及により生産が安定し、1989年に販売開始した「緑帝(りょくてい)」により品質が向上し、より消費が伸びました。そして2001年に発表した「ピクセル」により今まで難しかった高温期の栽培が可能になり、アメリカや中国からの青果物の輸入増加にも関わらず、国内での生産はさらに伸びていきました。ほとんど野菜の栽培面積が減少している昨今、ブロッコリーはまだ栽培面積を伸ばしています。

ブロッコリーの消費が伸びてきた理由は、健康によい野菜だからです。1970年代に、アメリカ人に多い結腸がんの予防に、ブロッコリーに多く含まれるビタミンCの効果が高いという研究が発表されると、その需要は劇的に伸びました。また最近ではブロッコリーに多く含まれるスルフォラファンやグルコシノレートに、がんの抑制効果があるという研究成果もあり、アメリカにかぎらず消費は伸び続けています。また最近では中国での消費が飛躍的に伸びています。それは流通網の発展により中国中に新鮮なブロッコリーが供給可能になったことと、何よりもブロッコリーが中華料理にとても合った野菜だったからです。

緑嶺

緑帝

ピクセル

皆さんは1年間にどれくらいのブロッコリーを食べていますか?日本人は冷凍ブロッコリーも含め、1年間に一人当たり1.4㎏のブロッコリーを食べています。アメリカ人が3.9㎏、イギリス人が4㎏以上を消費しているのに比べ、なんと消費量の少ないことでしょう。ブロッコリーは秋から冬がおいしい季節です。

さあ、さっそくブロッコリーを買いに行きましょう。