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100年を彩った品種たち

Episode 06 パンジー
LR(ロングラン)で秋から春まで楽しめるパンジーを

古くからイギリスでは、自生種のビオラ トリコロール(3色スミレ)を「heart's-ease」(心の癒し)と呼び、野山に生えているこの植物を自分の庭に植えて楽しんできました。

私たちが「パンジー」と呼ぶ植物は、品種改良という人間の技が生み出したものです。1813年にイギリスの貴族ガンビアー卿の庭師であったトンプソン氏がパンジーの改良を始めたのが最初と言われています。彼は野生種V. Toricolor、V. lutea、V. Altaicaなどから自然交雑個体を得る方法で雑種を得て、ブロッチのある個体を「マドラ」と名づけ増殖しました。

その後、イギリス各地にはパンジー協会ができ、次々と展覧会が催され、安価で丈夫な花は、欧州各地に広がり改良が進んでいきました。1920年には、スイスのログリー氏により今日まで流通している大輪系の「スイスジャイアント」が育成され、園芸品種の土台がつくられました。

スイスジャイアント

F1マジェスチックジャイアント

マキシム

1966年にAll-America Selections受賞品種として、世界で初めてパンジーのF1の時代の扉を開いたのは、サカタのタネです。直径10cm以上の花をつける巨大輪種の「F1マジェスチックジャイアント」が出来るまでは世界には固定種のパンジーしかなく、生育が早く丈夫で生産性の高い品種はありませんでした。これは世界中で高い評価を得て、需要に供給が追いつかない状態だったのです。その後、F1種子の大量生産技術の確立に成功し、全世界にF1のパンジーの普及の先駆けとなりました。

日本では1970年の「日本万国博覧会」(大阪万博)で丈夫なF1パンジーに注目が集まり、1990年の「国際花と緑の博覧会」(花の万博)を転換点として日本の園芸業界は著しい発展をはじめました。

花壇需要が高まる中、当社の育種は「トゥエンティース」や「マキシム」「クリスタル」シリーズへと、パンジーの品種は発展していきます。

サカタのタネが開発したF1パンジーは生育が旺盛で早生であったことから、夏にタネをまくと秋から花が咲く性質が見出され、日本のパンジー市場は春に楽しむパンジーから秋から楽しめるパンジーへと、生産と需要が大きく変化をしていったのです。

その後、大輪系の「リーガル」シリーズを発売し、秋出しパンジーとしてマーケットを構築し、リードしてきました。

リーガル

LR オトノ

LR アリル

本来、春に開花するはずのパンジーが秋から消費されるようになり、新たな課題が提示されました。パンジーは長日開花性で夏にタネをまくと秋に咲くのですが、冬になると短日期になるため、花を咲かせることを休んでしまうのです。

そこでサカタのタネは考えました。本来、パンジーが持っている生理生態学的な特徴を変化させ、冬でもよく咲くという非常に画期的な性質に改良するため、日長に関係なく開花する日長中性パンジーの開発が始まったのです。

1998年に「LR オトノ」シリーズ、「LR プロント」シリーズという日長中性中輪系品種を発表し、その問題を解決しました。その後、その考え方は2000年の大輪系品種「LR アリル」シリーズの開発など、今日に続くサカタのタネのパンジーに受け継がれています。

虹色スミレ®

よく咲くスミレ®

絵になるスミレ®

世界で大きな消費があるパンジーは、おそらく最も多くの人に愛される花といえるでしょう。丈夫で寒さに強く見飽きることがありません。「虹色スミレ®」「よく咲くスミレ®」「絵になるスミレ®」などワクワクする品種も誕生しています。

人々が好奇心をもっている限り、パンジーは限りなく進化していきます。

時代が変わっても世界中で愛されるパンジーは、今も昔も私たちに『heart's-ease』(心の癒し)として安らぎをもたらしてゆくことでしょう。