プロジェクトストーリー

「世界を動かす、タネをまこう。」に込めた想い—
GREEN×EXPO 2027で描く未来

110年以上にわたり、世界中に植物とタネを届けてきたサカタのタネは、
GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)にどのような想いで臨むのか。
プロジェクトをけん引する3名に、出展の背景やコンセプトに込めたメッセージ、
そしてサカタのタネが実直に積み重ねてきた「タネ」への情熱について語り合っていただきました。

  • 濱田 善之

    濱田 善之

    株式会社サカタのタネ
    2027年国際園芸博覧会プロジェクト リーダー

    2005年入社。海外営業部門にてキャリアを重ね、約7年間の米国駐在を経験。帰国後、海外営業を経てコーポレートコミュニケーション部へ異動し、現在はGREEN×EXPO 2027におけるサカタのタネ出展プロジェクトのリーダーを務める。プロジェクト全体の統括を担い、出展コンセプトの策定や広報活動に取り組み、国内外のステークホルダーとの連携を推進。サカタグループのグローバルな視点とネットワークを生かし、同社のブランド価値とメッセージの発信に取り組んでいる。

  • 清水 俊英

    清水 俊英

    株式会社サカタのタネ 理事
    2027年国際園芸博覧会プロジェクト サブリーダー

    1987年サカタのタネ入社。造園緑花事業、農業資材部門などに携わり、分野を中心に経験を積み、ソリューション部門、コーポレートコミュニケーション部の部長、経営本部の副本部長などを歴任。現在はサカタのタネ グリーンサービス株式会社の社外取締役を務める。GREEN×EXPO 2027出展プロジェクトには、サブリーダーとして参画し、全体の進行管理や関係各所との調整を担当。長い業界経験と幅広い人的ネットワークを生かし、プロジェクト立ち上げ当初から中心メンバーとして推進してきた。社内外関係者の橋渡し役として、円滑なプロジェクト運営を支えている。

  • 石川 智大

    石川 智大

    サカタのタネ グリーンサービス株式会社 取締役
    2027年国際園芸博覧会プロジェクト サブリーダー/庭園出展責任者

    2001年入社。植物のプロフェッショナルとして、花・樹木・芝生・野菜を活用した緑花事業に幅広く携わる。現在はサカタのタネ グリーンサービス株式会社の取締役として、商業施設や公園、スポーツ施設などの緑化景観の創出に取り組んでいる。GREEN×EXPO 2027出展プロジェクトではサブリーダー兼庭園出展の責任者を務め、庭園エリアの企画・設計・運営を統括。植物を活用した空間づくりの豊富な経験を生かし、サカタグループならではの魅力を来場者へ届ける展示の実現を目指している。また、プロジェクト立ち上げ期から携わる発起人の一人として、出展構想の具体化をけん引してきた。

タネと向き合い続けて110年以上。

受け継がれる
品質へのこだわり

濱田
GREEN×EXPO 2027の出展に向け、サカタのタネとして大きな挑戦が始まっています。今回のコンセプトの軸は「タネ」ですが、お二人はタネのどのようなところが面白いと感じますか?
石川
一般の方からすると、タネはニッチな存在かもしれません。しかし、例えばスポーツスタジアムの芝生もタネから育てられていて、用途や環境に応じて数多くの品種が使い分けられています。また、私たちが口にする野菜や街を彩る花も、すべてタネから始まります。決して目立たないけれど、私たちの暮らしを身近なところで支えていることが、タネの面白さだと思っています。
清水
タネは生き物である以上、必ずしも思い通りにならないところに奥深さを感じます。私自身も畑で野菜を育てていますが、土にタネをまき、数日後に小さな芽が顔を出した瞬間は、何度経験してもうれしいものです。一方で、芽が出なかったときの落胆も大きい。だからこそ、「私たちがお届けするタネは、きちんと芽が出るものでなければならない」という責任を感じますね。
石川
本当にそうですね。植物の育ち方には「一期一会」の面白さもあります。GREEN×EXPO 2027に向けても試験栽培を重ねていますが、その年の気候や会場の環境条件が異なることで、植物の表情は変わります。その瞬間にしか生まれない景色を来場者の皆さまにお見せできることも、このプロジェクトの魅力です。
濱田
タネは一粒が小さいため輸送しやすく、世界中に届けられることも面白いところだと思います。国や地域によって土や気候が異なるので、同じ品種でも育ち方や表情は少しずつ変わります。それでも、同じ品種の小さなタネが国境を越え、それぞれの土地で花を咲かせている姿を見ると、タネには人や地域をつなぐ力があるのだと感じます。そして、お客様がまだ芽も出ていない小さなタネを購入してくださるのは、私たちが長年積み重ねてきた品質への信頼があってこそですよね。
清水
創業者・坂田武雄が掲げた社是には、「品質・誠実・奉仕」という3つの言葉があります。最初に「品質」が置かれているのは、タネが見た目だけでは価値を判断できない商品だからです。芽が出るか、どのような花や野菜が育つかは、育ててみなければ分かりません。もし品質に問題があれば、生産者や園芸家の方々が1年かけて注いできた努力を台無しにしてしまいます。
濱田
社内では出荷前に発芽試験を行うだけでなく、実際に栽培し、お客様に約束したとおりの花や実が育つかどうかをチェックしています。こうした積み重ねが、110年以上にわたる信頼につながってきました。GREEN×EXPO 2027という舞台を通じて、タネの魅力や私たちの品質へのこだわりを、多くの方にお伝えしたいと考えています。

コンセプトはどのように
生まれたのか。

未来を育てる
「タネ」に込めた想い

濱田
清水さん、今回のプロジェクトが動き出したとき、最初の壁は何でしたか?
清水
1990年に大阪府で開催された「国際花と緑の博覧会」以来の大規模な出展となりますが、今回の企画や運営の参考となる詳細な資料は十分に残っておらず、“ゼロからのスタート”だったことですね。日本を代表する種苗メーカーとしての自負はありますが、イベントづくりに関する経験は少ない。「コンセプトはどう決めるのか」「人員は何人必要なのか」など、一つひとつ手探りで進めてきました。ただ、決まった形がないからこそ、自分たちの発想で自由に挑戦できる面白さも感じています。
石川
これほど社内の部署やグループ会社の垣根を越え、一つの目標に向かって取り組むプロジェクトも、なかなかないですよね。議論を重ねるたびに、「みんなこんなにも熱い想いで、自社のタネや植物に誇りを持っているんだ」と刺激を受けています。このチームの一員として参加できていること自体が、とても貴重な機会だと感じています。
濱田
まさにその熱い議論を経て決定したコンセプトが、「世界を動かす、タネをまこう。」でした。関係部署へのヒアリングでそれぞれの展示にかける想いなどをまとめ、複数の案が挙がりましたが、「タネ」という言葉を軸に据えたいという強い想いは、みんなに共通していたと思います。

世界を動かす、
タネをまこう。

たった一粒の小さなタネに、どれほど大きな可能性が宿っているのか。
私たちはそのことを、肌で感じてきました。

タネは、「はじまりのはじまり」。
芽を出し、根を張り、新しい花や野菜との出会いを生み、
人々の暮らしをゆたかに彩り、ときには文化や価値観までも変えていきます。
タネは、いのちを過去から今へつないできました。
そして、今、あなたがまいたタネは、未来を育てていきます。

サカタのタネは110年以上にわたり、世界中の人々と植物をつないできました。
GREEN×EXPO 2027では、私たちの出展を通じて、植物たちの美しさや素晴らしさとともに、
そのはじまりにあるタネの不思議や可能性を感じていただければと思っています。

誰でも心に「はじまりのタネ」をもっています。
さあ、一緒にタネをまいて、幸せな未来のために世界を動かしていきましょう。

清水
そうでしたね。そのうえで、「私たちはこれから何を目指すのか」「未来にどのような変化を生み出したいのか」が直感的に伝わる言葉にしたい、と議論しましたね。
濱田
英文コンセプト「Plant the Seeds. Grow Our Future.」を策定する際も、海外スタッフと熱いやり取りがありました。
清水
当初は「Shape(注:形づくる)」も候補に挙がっていましたが、海外スタッフから「Grow(注:育てる)」のほうがふさわしいのではないかと提案がありました。「世界中の人々と一緒に、未来をよりよく育てていく」というメッセージが込もった、私たちらしいコンセプトになったと思います。
濱田
ちょうど7月に発表された長期経営計画「PASSION2035」のキーステートメント「Cultivating Tomorrow’s Harvest with You(注:あなたと共に培う、未来の豊かさ)」とも響き合っていますよね。「Cultivate(注:耕す)」という営みと、「未来を育てる」というコンセプトがつながることで、グループとして一貫したメッセージを発信できる軸が生まれたように感じます。

見て、知って、想像する。

訪れるたび新しい景色と出会う展示

清水
コンセプトのボディコピーにある「タネは、はじまりのはじまり」も気に入っています。人が新しい挑戦を始めるとき、その心のなかには必ず“意思のタネ”が存在している。植物のタネだけでなく、新しい未来を生み出す原点としてのタネ。そんな普遍的なメッセージが伝わるボディコピーになりました。
濱田
これらのコンセプトやボディコピーは、GREEN×EXPO 2027の各展示の内容とも連動していますね。展示は、サカタのタネの「特設館」、「庭園」、「屋内出展(短期間)」、当社グループ会社であるサカタのタネ グリーンサービスの「庭園」で構成され、すべての展示が「タネ」でつながっています。
清水
特設館のテーマは「旅するタネと私」。タネの不思議さや魅力をさまざまな体験型展示を通して発信します。庭園は「百花菜覧」をテーマに、4つのテーマガーデンをしつらえます。季節に合わせて植栽を入れ替えるので、花の演出やテーマカラーが少しずつ変化していく点も見どころです。
石川
サカタのタネ グリーンサービスの庭園のテーマは、「自然と溶け合う理想の暮らし」です。彩り豊かな宿根草や一年草による鮮やかな植栽から、横浜市在来の樹木や山野草によるナチュラルな植栽へと、ビオトープの川の流れに沿って景色が変化します。植物やビオトープ、暮らしを表現した空間を通じて、人と自然が寄り添いながら暮らす未来の風景を提案します。また、期間限定の屋内出展は5月と7月に行い、それぞれ異なる展示内容を展開。会期中も植物の表情が変化するため、一度だけでなく何度訪れても新しい発見があります。
濱田
まずは特設館に立ち寄り、タネの不思議に触れていただくのがおすすめです。そこで「タネって面白いな」と感じてから外に出ると、庭園に広がる花や植物が、より興味深く見えてくるかもしれません。植物は天候によっても表情が変わります。雨の日ならではの魅力を探してみるのも、楽しみ方の一つだと思います。
石川
庭園展示の中央には「ミライのハナ」と名づけた大型オブジェを設置します。モチーフとなるのは、まだ世界のどこにも存在しない“未来の花”。現実にはない花だからこそ、来場された方一人ひとりが「未来にはどんな花が咲くのだろう」「植物と人は、これからどんな関係を築いていくのだろう」と、想像を自由に膨らませることができます。見る人によってさまざまな物語が生まれる、余白のある展示になっています。

1990年大阪から2027年横浜へ。

一粒のタネから広がる、よりよい未来

濱田
来場者の皆さまには、どんな想いを持ち帰ってほしいと思いますか? 私としては、特設館でタネに秘められた力を知り、庭園で生命の輝きに触れていただく。そうした一連の体験を通じて、自然との共生やウェルビーイングな社会について考えるきっかけを提供できればと考えています。
清水
そうですね。植物の多様な魅力に触れ、「暮らしのなかにもっと植物を取り入れてみよう」と感じていただけるような、小さな気づきにつながればうれしいです。私は、入社3年目に「国際花と緑の博覧会」に自社出展の植栽管理補助として参加しました。「咲くやこの花館」で生体展示されたヒマラヤの青いケシや、政府苑で世界最大級の花として話題を集めた「ラフレシア」の標本なども印象に残っていますね。こんな花々が世の中にあるのかと驚き、知らない植物に出会う面白さを感じました。会期終了後は「ガーデニング」という言葉が広く知られるようになり、園芸の楽しみ方や価値に対する認識も大きく変化していきました。今回もそういうムーブメントのきっかけになれたらと願っています。
石川
当社グループの従業員にも、当時の清水さんのように刺激を受けてほしいですよね。社内にもさまざまな「タネ」をまいていきたいという想いがあります。この大きなプロジェクトに挑むこと自体が、新たな発想や挑戦を生み出す原動力になることを期待しています。
濱田
その波及効果が、業界全体にも広がってほしいですね。農園芸業界はいま、生産コストの上昇や需要の伸び悩みといった課題に直面しており、大きな転換期を迎えています。だからこそ、種苗会社として私たちにできる役割を果たし、生産者や出展者、関係者の皆さまと共にGREEN×EXPO 2027を盛り上げていきたい。園芸の魅力や植物の価値をより多くの方へ届け、業界全体の活性化につながる機会にしていきたいと考えています。
清水
今、直面している社会課題は、一つの企業だけで解決できるものではありません。美しい花や緑をきっかけに、植物の可能性に目を向ける人が増え、企業同士が社会課題の解決に向けて手を取り合っていく。GREEN×EXPO 2027でまかれる新たな「タネ」が、そうしたよりよい未来へつながる「はじまりのはじまり」になることを願っています。GREEN×EXPO 2027はゴールではなく、新たな未来へのスタートラインでもあります。