サカタのタネは、ウリ科野菜の接ぎ木苗※1生産のための接ぎ木作業を行う半自動接ぎ木ロボット『UPS-T2000』(ユーピーエス ティー2000)=写真=を、2019年2月から発売します。

『UPS-T2000』(ユーピーエス ティー2000)の画像

『UPS-T2000』は、根を切断した台木と穂木のセット作業は手動で行い、その後の作業(台木の芽かき※2、台木の挿し穴形成、穂木のカット・挿し接ぎ)を自動で行います。

従来のウリ科野菜の接ぎ木ロボットは、台木の胚軸※3を片側の子葉とともに斜めに切断する「片葉切断接ぎ」が多く採用されていましたが、『UPS-T2000』は子葉を切断せずに穂木を接ぐ「挿し接ぎ(プロペラ接ぎ)」ができるので、接ぎ木をした後の生育向上が見込めます。

また、『UPS-T2000』は全自動ではなく半自動とすることで、(1)省スペース、(2)1人で作業可能、(3)比較的安価に導入できる、というメリットがあります。なお、ウリ科野菜の挿し接ぎを行う接ぎ木ロボットは世界初で、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願中です。

『UPS-T2000』の希望小売価格※4は7,480,000円(税抜)です。全国の当社特約店などを通じて販売します。

増加する接ぎ木苗のニーズ

 ウリ科野菜(主にキュウリ、スイカ、メロン)、およびナス科野菜(主にトマト、ナス、ピーマン)の生産農家では、栽培時の病虫害対策、草勢管理、青果の品質向上などを目的に接ぎ木苗の利用が増えています。その利用率は年々増加しており、キュウリ生産農家では9割を超えるといわれています。また、生産農家ではかつては苗を自家生産していましたが、近年では苗を購入する割合が増えています。キュウリは他の品目に比べてその割合が高く、6割以上が購入苗だといわれています。接ぎ木にはいくつかの方法がありますが、キュウリの購入接ぎ木苗の場合、「断根挿し接ぎ」が最も多く4割以上を占めます※5

人手不足の課題を解消

「挿し接ぎ(プロペラ接ぎ)」は他の接ぎ木方式とは違い、接ぎ木補助資材を必要としませんが、その作業は熟練を要するため、高品質の接ぎ木苗を効率よく生産するには経験を持った作業者が必要となります。しかし、高齢化による担い手不足に加えて、近年は人手不足が重なり、苗生産の現場では新たな人員の雇用と作業の教育が非常に難しい状況にあります。

こうした課題の解決に向けて、当社では2014年から挿し接ぎ方式の接ぎ木ロボットの開発を開始いたしました。

ロボットが接ぎ木作業を行うことで、作業者に技術がなくても、高品質の接ぎ木苗を作ることが可能となります。接ぎ木ロボット『UPS-T2000』は従来の接ぎ木ロボットと比べて省スペース・少人数・比較的安価というメリットがあるため、人手不足・熟練者不足の課題を抱える苗専門業者をはじめ、苗の自家生産を検討している産地や生産組合にも適しています。

『UPS-T2000』作業の一部

台木をセット(手動)
台木に穂木を挿す(自動)
中央の作業台が時計回りをしながら手前から「台木をセット」「芽かき」「台木の挿し穴形成」「穂木のカット・挿し接ぎ」を行う

台木をセット(手動)

台木に穂木を挿す(自動)

中央の作業台が時計回りをしながら手前から「台木をセット」「芽かき」「台木の挿し穴形成」「穂木のカット・挿し接ぎ」を行う

 「プラントプラグ®」と併用することで作業効率が向上

『UPS-T2000』で作った接ぎ木苗は、その後はセルトレーなどに挿し木をして育苗しますが、この際に固化培土「プラントプラグ」を利用すると、育苗全体の作業が効率化し、作業量の低減が見込めます。「プラントプラグ」はココ繊維とピートモスなどの素材に特殊な固化剤をブレンドし、セルトレー内に充填・成型したものです。一般的な培土を詰めたセルトレーで育苗する場合、根が伸びて培土全体に回り、培土が崩れにくくなってから移植(ポット上げ)するのに対して、「プラントプラグ」は培土が崩れにくいため、移植までの期間を短縮することができ、移植作業もしやすいというメリットがあります。

「プラントプラグ」

手接ぎとロボット接ぎの比較

手接ぎ苗と比べて、ロボット接ぎ苗の生育に大きな差異は見られません。

(左)手接ぎ(中央)ロボット接ぎ(右)ロボット接ぎ

PCT国際出願中

特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。

国際出願番号:PCT/JP2018/017330
発明の名称:接ぎ木装置

『UPS-T2000』の主な仕様

外形寸法

幅 900mm × 奥行き 600mm × 高さ 1,100mm(ゴム足含む)

重量

約100kg

接ぎ木方式

挿し接ぎ(プロペラ接ぎ)

処理能力

約200(本/時間)

精度(接合率)

95%以上

対象作目

ウリ科野菜(キュウリ、スイカ、メロン)

作業人員

1名

消耗品

穂木カッター刃

電源

AC 100V 50/60Hz

消費電力

200Wh

最大消費電力

400W

製品保証期間

1年

その他

エアコンプレッサー(0.4MPa以上)が別途必要

※1 接ぎ木苗:
幼苗時に苗の一部を切断し、そこに別の苗を接着するもの。このとき、上部になる植物体を穂木(ほぎ)、下部の植物体を台木(だいぎ)という。例えば、病気に強い台木品種の上に、収量や食味の良い穂木品種を接ぐことで、両方の性質を備えさせることができる。

※2 芽かき:
その後の生育に不要な芽をかき取ること。接ぎ木苗は、穂木を生育させるため、台木の芽(本葉)をかき取る。

※3 胚軸:
植物の子葉と幼根の間にできる茎状の部分。

※4 価格はすべて希望小売価格(税抜)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。

※5 参考資料:
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 研究資料第7号「野菜の接ぎ木栽培の現状と課題」(2011年2月)