サカタのタネは、高温期でも安定した果実サイズで、裂果※1に強く、色回りに優れたミニトマトの新品種『キャロルムーン』(=写真=)の種子を2020年1月上旬から発売します。
夏場の高温期における栽培では、草勢が低下し果実サイズが小さくなる、高温で裂果しやすい、着色不良果(黄変果)が発生するなどの問題が多く発生しています。これらにより、商品価値が下がり、深刻な場合は出荷できず収量を下げる原因となってしまうこともあります。『キャロルムーン』は草勢が強く、高温期の着果性に優れ、約15gの果実を安定的に秋まで収穫することができます。実の硬さがしっかりしていて、裂果しにくいので夏場の輸送性にも優れます。さらに『キャロルムーン』はヘタの周りが緑色にならない(ベースグリーンがない)品種で、色回りに優れ、果実が全体的に均一に赤く熟します。甘みと酸味のバランスがよく、食味にも優れます。
『キャロルムーン』は葉かび病※2に対して抵抗性※3を持ちます。本病害は20℃程度の比較的低温と多湿を好むため、条件を満たす環境下であれば全国で周年発生します。特に施設栽培で保温のため換気が少なくなる晩秋~早春に発生が多いとされています。夏秋、越冬栽培通して発生する斑点病※4や萎凋病※5(F:R-1,2)、根腐萎凋病※6、ToMV※7(Tm-2型)にも抵抗性があります。
ミニトマト『キャロルムーン』の希望小売価格※8はプライマックス®※9種子1,000粒袋24,500円で、
夏秋ミニトマト生産の課題を解決する『キャロルムーン』
近年の梅雨の曇天や夏の高温など天候不順は野菜生産現場で大きな影響を与えています。ミニトマトでは曇天や高温で果実が小さくなってしまう、裂果してしまう、暑さで株が弱り、着果しにくくなってしまうなど、各地で問題が発生しています。果実が小さすぎたり、裂果したり、うまく色づかなかった青果物は商品価値が下がり、出荷できなくなってしまいます。『キャロルムーン』はM~2L基準に当てはまる15g前後の果実が安定して収穫でき、色回りに優れ、裂果に強く、暑さでも草勢が落ちずに長く収穫することができます。さらに、節間が詰まり、草勢が強くても異常茎の発生が少なく、夏のミニトマト生産の問題解決の一助となります。ミニトマト『キャロルムーン』は暑さの中でも安定した品質と量のミニトマトが収穫できる品種です。
ミニトマト『キャロルムーン』作型図
※1 裂果:
収穫期近くになり、果実表面が果実内部の膨圧に耐えきれず、はじき割れること。裂果には、果梗(かこう)部を中心に同心円状に果実が裂ける同心円裂果、果梗部から放射状に裂ける放射状裂果および果実側面が裂ける側面裂果がある。
※2 葉かび病:
糸状菌による病害。葉だけに発生する。はじめ葉の表側にボンヤリとしたやや黄色みがかった病斑が発生し、やがて葉の裏側に灰白色のカビが発生し、後期には灰褐色に変色する。場合によっては葉の表側にもカビが生じ、葉枯れを起こす。多湿条件下で発生し、激しく発生した場合には着果不良や果実の肥大不良の原因となる。
※3 抵抗性と耐病性:
当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくい安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受け易いが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。
※4 斑点病:
糸状菌による病害。主として葉に発生する。病斑ははじめ褐色の小斑点で、その後拡大して2~3mmの周縁が黒色で中心部が灰褐色の円形~不正形となる。病気が進むと病斑の中心部に穴があく。多湿条件下で発生し、窒素過多や肥切れするようなときに発病しやすい。
※5 萎凋病:
土壌病害で病原菌(糸状菌)は根から侵入して導管内で増殖・伸展する。はじめ葉が萎凋、黄化してついには株全体がしおれて枯死する。
※6 根腐萎凋病 :
土壌病害で病原菌(糸状菌)が根から侵入して根腐れや維管束の褐変をおこす。発病は地温が15~20℃のときに激しく、晩秋から春にかけて発生する。慢性的にしおれ、下葉から黄化してやがて枯死する。
※7 ToMV(トマトモザイクウイルス):主として葉にモザイク症状が現れ、ときに葉の先が細くなることもある。また、茎葉や果実に激しいえそが生じる場合もある。
※8 価格はすべて希望小売価格(税抜)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。
※9 プライマックス:発芽ぞろいをよくするための発芽促進処理。トマトの場合、そろいがよいことで接ぎ木栽培の効率や歩留まり率が向上し、コスト削減、品質向上に寄与する。