コマツナ『さくらぎ』の画像

サカタのタネは、極立性で収穫・調整作業性に優れるコマツナの新品種『さくらぎ』(=写真=)の種子を2020年6月下旬から発売します。

『さくらぎ』は中早生の品種で、最大の特長は極立性のため圃場で葉が絡まない、細根が少なく土が付きにくい、下葉が取りやすいなど収穫・調整作業性に優れる点です。コマツナ栽培において、収穫・調整作業は全労働時間の約8割とも言われ、野菜品目の中でもとりわけ収穫・調整の省力化が重視されます。さらに、葉肉、葉柄が厚い上に株張りがよいため重量が乗りやすく、照りのある葉と極立性の草姿で見栄えも優れる、高収量、高品質を期待できる品種です。

栽培面では、主根が長く深いため、乾燥によるカッピング※1やチップバーン※2が発生しにくく、安心して栽培できます。さらに、春・秋に発生しやすい白さび病や、夏に発生しやすい萎黄病に耐病性※3があります。寒さ、暑さへの適応範囲が広く、気候が読みにくい季節の変わり目でも栽培できます。

『さくらぎ』は第64回全日本野菜品種審査会1等特別賞、農林水産大臣賞を受賞する※4など、その性質を高く評価されています。当社のコマツナの中軸を担う品種として、積極的に拡販していきます。

コマツナ『さくらぎ』の種子の希望小売価格※5は20ml袋で520円(税抜)、2dl袋で4,950円(税抜)で、3年後の販売目標は1億円です。全国の種苗店、JAを通じて販売します。

コマツナにおける収穫・調整作業性の重要さ

2018年のコマツナの国内作付面積は約7,250ヘクタール、出荷量は約10.2万トンで、全体的に減少傾向にある野菜生産の中では増加傾向にあります。閑散期の輪作、新規就農者による栽培のほか、栽培期間が短く比較的容易に栽培でき、経営的に安定しやすいため、大規模生産が増えていることも要因の一つとして考えられます。まだまだ拡大の余地があるコマツナ生産ですが、一方で労働力不足も問題となっています。コマツナ生産の大部分は収穫・調整作業にかかると言われ、特に大規模化や法人化して雇用型農業を営む生産者にとっては収穫・調整作業にかかる労力削減が雇用、利益などの面から課題となっています。

『さくらぎ』は1)極立性で葉が絡みにくく収穫しやすい、2)葉柄がしっかりしているので折れにくい、3)葉が広がらないので販売用の袋に入れやすい、などのメリットがあります。試作した生産者からは「『さくらぎ』は収穫・調整作業の労力が約10~15%削減できる」といった評価もいただいています。

作業性にこだわってきたサカタのコマツナ育種

コマツナは江戸時代の初めに現在の東京都江戸川区小松川付近で栽培されていたことが名前の由来とされており、かつては東京とその近郊で生産、消費される地方野菜でした。1977年、当社が世界初のコマツナF1品種「みすぎ」を発売したことを一つのきっかけに、全国へと広がりました。

コマツナは栽培期間が短く、作業労力の約8割が収穫・調整作業に使われます。当社はいち早くこの点に注目し、2003年に極立性で葉柄が折れにくく結束作業が容易なコマツナ「なかまち」を発表しました。収穫から出荷までの作業を大幅に削減でき、今でも多くのコマツナ生産者の経営に貢献している品種です。

以降も当社では「作業性」をテーマに品種開発を続け、今回『さくらぎ』を発表するに至りました。「なかまち」発売当時と比べ、大規模化や法人化、労働力不足はさらに進んでいます。『さくらぎ』は現代のコマツナ生産における課題解決の一助となる品種であると期待しています。

コマツナ『さくらぎ』の作型図

コマツナ『さくらぎ』の作型図

※1 カッピング:
葉がカップのように丸まってしまう状態。カッピングになると出荷・調整時に、葉が破れたりするので秀品率が低下します。

※2 チップバーン(tip-burn):
葉の先が茶色に変色し、最終的に枯れてしまう現象。窒素過多、カルシウム欠乏で起きます。

※3 抵抗性と耐病性:
当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくい安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受け易いが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。

※4 「なかまち32号」の名称で受賞。

※5 価格はすべて希望小売価格(税抜)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。