大玉トマト新品種『かれん』

 サカタのタネはトマト黄化葉巻病※1耐病性※2、食味、収量性、作業性を兼ね備えた抑制・促成栽培向きの大玉トマトの新品種『かれん』=写真=の種子を、生産者向けに2020年6月上旬から発売します。

トマト黄化葉巻病は、九州から関東までの抑制・促成栽培の産地においてトマトの収量に深刻な被害をもたらしている病害です。『かれん』は同病害への耐病性を持つ品種の中でも、特に食味にこだわって育成したため、甘みと酸味のバランスがよい、食味に優れた品種です。『かれん』は収穫後半まで着果性に優れ、空洞果※3や乱形果の発生が少ないので、安定した収量性、秀品率の実現に貢献することができます。試作先、市場関係者などからも食味、収量、品質面において高い評価を得ています。

『かれん』は節間が詰まり、葉先枯れの発生が少ないことも特長の一つです。節間が詰まることで、樹の高さを調整するつるおろし作業など誘引作業の頻度を軽減することができます。葉先枯れの発生が少ないため、葉先枯れを原因とする灰色かび病※4の発生を抑えることができ、薬剤散布などの手間の軽減にもつながります。生産現場では労働力不足や高齢化で省力化が求められており、『かれん』はこのような現場の問題解決にもつながる品種です。

なお、『かれん』は果実が硬く、日持ち性にも優れ、当社の赤熟もぎり※5の統一青果ブランド「王様トマト※6」として出荷できる品種です。大玉トマト『かれん』の種子の希望小売価格※7は、1,000粒入り袋35,000円(税抜)で、全国の種苗店、JAルートを通じて販売します。3年後の売上目標は2億円です。

黄化葉巻病耐病性の大玉トマト『かれん』と「麗妃」の使い分けで現場ニーズに対応

当社は『かれん』のほかにも黄化葉巻病耐病性品種があり、その1つに「麗妃」=写真=があります。2017年に発表した同品種は現在抑制・促成の作型で広く使用され、収量性、秀品率の面において高い評価をいただいています。

『かれん』は節間が詰まる品種のため1)誘引作業を軽減できる、2)低いハウスでも栽培しやすい、3)4月以降の果実肥大性に優れる—というメリット、「麗妃」は節間が詰まりすぎず、1)葉が比較的小さいことから採光性に優れる、2)栽培方法によっては葉かき作業を軽減できる、3)特に12月~2月の低温期における果実肥大性に優れる—というメリットがあります。生産者の栽培方法や環境によって節間が詰まるか否かの好みは分かれ、どちらの品種もラインアップ上重要です。

これまで当社は黄化葉巻病耐病性品種では節間が詰まりすぎないタイプ(「麗旬」、「麗妃」)を取り扱っていましたが、『かれん』を追加することで、生産者は自身の栽培方法やハウス環境に合わせて品種を選択できるようになります。これらの品種を使い分けることで、現場での省力化、収量増の両立を期待しています。当社は『かれん』と「麗妃」を抑制・促成の大玉トマト品種の2大エースとして、さらなるシェアアップを目指すと共に、味がよく高品質のトマトの市場への流通、生産者の栽培にかかる負担の軽減や収量性の向上などを通じて、さまざまな課題解決につながると期待しています。

大玉トマト「麗妃」

大玉トマト『かれん』作型図

※1 トマト黄化葉巻病:
現在九州から関東までのトマト産地で深刻な被害をもたらしている病害。発病すると葉が葉巻のような症状となり、進行すると株全体が萎縮し収量が激減する。症状が劇症型のイスラエル系統と、比較的、症状が穏やかなマイルド系統の2種類がある。

※2 抵抗性と耐病性:
当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくく安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受け易いが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。

※3 空洞果:
果肉部がゼリー状物質で充満せずに果皮部と胎座部の間に空洞が生じた果実。

※4 灰色かび病:
水が染みたような淡褐色の斑点ができ、その後急激に斑点が大きくなり腐敗する。病原菌は糸状菌の一種。健全な植物であれば病原菌は侵入しないが、傷があったり衰弱した組織には容易に侵入する。

※5 赤熟もぎり:
トマトの5段階熟度表の4段階(10段階熟度表では8)以降の赤さを基準に、トマトを樹で赤く熟させてから収穫する方法。

※6 王様トマト:
当社が開発した肉質がしっかりしたトマト品種を赤熟で収穫した青果ブランド。

※7 価格はすべて希望小売価格(税抜)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。