サカタのタネは青枯病※1、褐色根腐病※2に強度の耐病性※3があり、かいよう病※4耐病性も併せ持ち栽培後半まで草勢を維持できる台木トマトの新品種『グランシールド』の種子を営利生産者向けに発売します。
トマトにおいて台木を使用する主な理由は1)高温期に問題となる青枯病、低温期に問題となる褐色根腐病への耐病性付与、2)草勢を維持するためのスタミナ向上—です。近年は栽培の長期化などで、低温期、高温期どちらも栽培期間に入ることから両病害への複合耐病性が重要となり、同時に長期収穫や厳しい気候に耐えられる強い草勢も求められる傾向にあります。従来の青枯病に強い品種の草勢はおとなしい傾向にありますが、『グランシールド』は当社台木トマトの中でもトップクラスの青枯病耐病性を持ち、なおかつ後半まで草勢を維持できるスタミナも兼ね備えた品種です。さらに、褐色根腐病に対しても強度の耐病性、かいよう病への耐病性も持ちます。
猛暑などの気候変動や全国的な病害の広がりでトマト生産は難しさを増していますが、耐病性とスタミナを両立した『グランシールド』が生産現場の課題解決につながることを期待しています。同品種は今後当社の台木品種の中核として積極的に拡販していきます。
台木トマト『グランシールド』の種子の希望小売価格※5はプライマックス種子®1袋1,000粒入り13,900円で、3年後の販売目標は1億円です。全国のJA、種苗店を通じて2021年1月上旬から発売します。
『グランシールド』と当社台木トマト品種のラインアップ
台木トマト品種は従来青枯病や褐色根腐病への耐病性が重視されてきましたが、近年は猛暑や栽培の長期化などの影響で、草勢の強い(スタミナのある)品種を求める声が高まっています。一方で、栽培方法や使用穂木品種によっては草勢が強すぎない台木を好む生産者も存在し、どちらのタイプの品種もラインアップ上重要です。
当社では草勢が強い「アシスト」、「バックアタック」、草勢が中程度の「シャットアウト」など、特色の異なる品種を取りそろえ、生産者の実情に応じて品種を提案しています。今回開発した『グランシールド』は当社の台木シリーズの中でもトップクラスの青枯病耐病性を持ち、さらに栽培の後半まで維持できる草勢を両立した品種です。本品種のラインアップ追加により、一層耐病性と草勢の兼ね合いでの品種選択の幅が広がります。
当社トップクラスの青枯病耐病性を持つ『グランシールド』
他社従来品種の台木を使ったトマト(写真左)は青枯病が発生し、大きな被害を受けている。急遽キュウリに植え替えた箇所もある。 |
サカタのタネ 台木トマトの特性一覧
N:ネマトーダ F-1:萎凋病レース1 F-2:萎凋病レース2 F-3:萎凋病レース3 J-3:根腐萎凋病 V-1:半身萎凋病レース1 V-2:半身萎凋病レース2
K:褐色根腐病 B:青枯病 Cmm:かいよう病
耐虫性:□ 抵抗性:◎ 耐病性:耐病性の程度:弱い 1 ←→ 10 強い ○中強
※耐病性は環境条件によって発病することがあります。ここでは当社台木トマトの相対的な耐病レベルを1(弱)⇔10(強)として示しています(2020年9月現在)。
なお、耐病性の「10」の数値は抵抗性を示すものではありません。
※1 青枯病:
病原菌(細菌)が根の傷口から感染、侵入して発病する。気温が20℃くらいから発病し、日中、地上全体が青いまましおれ、やがて枯死する。
※2 褐色根腐病:
主に促成栽培などの低温期に発生する土壌病害で、病原菌(糸状菌)が根に感染して発生する。感染した根は褐色に変色して表面がざらざらにコルク化する。土壌中からの水分の吸収ができなくなるため日中晴れると茎葉がしおれる。やがて感染した植物体は枝葉が黄化して完全に枯死する。
※3 抵抗性と耐病性:
当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくく安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受け易いが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。
※4 かいよう病:
トマトかいよう病。病原菌(細菌)により土壌伝染などのほか、管理作業などによってできた傷口から二次伝染する。多湿時に多く発生し、下部の葉の周辺がしおれ始め、その後、株全体がしおれて枯死する。
※5 価格はすべて希望小売価格(税抜)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。