『Arsprout Pi』の画像

 サカタのタネは株式会社ワビット(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長:戸板 裕康、以下、ワビット) の低コスト環境制御システム「アルスプラウト※1」の新ソフトウェア『Arsprout Pi(パイ)』(以下アルスプラウト Pi)を同社と共同開発しました。2021 年3月8日からワビットより本格提供※2が開始されます。なお、 同日より本ソフトウェアはオンライン展示会「AGRI EXPO ONLINE」の当社ブース※3にて紹介します。 

「アルスプラウト」はワビットが2018 年に開発した環境制御システムで、低コストかつ DIY 型による自由 度の高さが特徴です※4。実際の制御を行うためのソフトウェアは「UECS-Pi」を提供していましたが、制御条件を詳細に設定する必要があり、慣れていない利用者には複雑なものでした。今回共同開発した『アルスプラウト Pi』では従来の詳細設定に加え、大幅に入力条件が少ない「標準制御」も選択できるようになりました。アイコンやグラフなどで制御モニターの視認性を高め、直感的に扱いやすくなった点も特徴です。開発にあたり、当社は研究農場での実証試験や植物の専門知識による追加機能の提案などを行いました。 

 
現在農業の現場では労働力不足のため省力化が重要な課題となっており、環境制御システムが注目されています。「アルスプラウト」は中小規模の生産者でも導入しやすい低コストの環境制御システムとして評価を得ており、さらに扱いやすい新ソフトウェア『アルスプラウト Pi』の共同開発・本格提供によって環境制御システムを導入する生産者が増え、生産現場の省力化につながることを期待しています。当社では引き続きワビットと協力し、環境制御システム「アルスプラウト」の普及に努めます。

生産現場における労働力不足と低コスト環境制御システム「アルスプラウト」の可能性

 日本の農業従事者数は約136 万1千人※5。年々減少傾向にあり、省力化が求められています。このような状況の中で、環境制御システムは政府や自治体も予算に組み込み積極的に推進するなど、労働力不足への解決策として注目を集めていますが、日本では中小規模の生産者が多くシステム導入費に対する利益を出しにくいため、導入がなかなか進みません。ワビットが開発した「アルスプラウト」はDIY 型かつ自由度が高く生産者の実情に合わせて機能を取捨選択できる ため、中小規模の生産者では一般的な環境制御システムと比べ約半額から半額以上※6の低コストで導入できます。今回、より設定が容易なソフトウェア『アルスプラウト Pi』の本格提供を開始することで、さらに導入のハードルを下げ、幅広い生産者が環境制御システムを導入し、日本の農業の省力化につながることを期待しています。 

現場で本当に必要な機能を、種苗メーカーだからこそできる提案

当社はワビットと2018 年に本格的に共同実証試験を開始しました。現在当社ではすべての研究農場に「アルスプラウト」を導入し、実際の現場で機能するか、必要な機能はないかなど調査しています。『アルスプラウト Pi』の開発では研究農場の栽培担当者からの要望を生かし、急激な温度変化を避けるために保温カーテンを段階的に開閉する機能や光合成効率を上げるための温度補正機能など、植物栽培の現場で研究を行う当社だからこそ提案できた機能が多く実装されています。

当社研究農場での使用の様子

初心者も熟練者も、『アルスプラウト Pi』の選べる設定方法

従来のソフトウェア「UECS-Pi」と比べた『アルスプラウト Pi』の特徴は条件入力が容易な「標準制御」機能の追加です。例えば「UECS-Pi」では温度設定の場合、「28℃になったら天窓を開ける」「23℃になったら天窓を閉める」「雨の場合は閉める」など、多くの条件を入力し、さらにその条件がほかの条件と矛盾していないかなどを確認する必要がありました。新ソフトウェア『アルスプラウト Pi』の温度設定では、「 9時から 12 時」「28℃」のように何時に何度の気温にしたいかを入力するだけで設定ができます。実際の農業現場では機器の動作を設定する場合「9時から 12 時は 28℃」のような簡単な条件を入力するのみであることが多く、「標準制御」ではより生産現場の感覚に近い設定が可能です。

一方、従来の詳細な設定は複雑である反面、自由度が高くより思い通りの設定ができます。『アルスプラウト Pi』ではこの詳細な設定機能も利用でき、利用者のスキルや目的に合わせて選択できます。

従来ソフトウェア「UECS-Pi」

新ソフトウェア『アルスプラウト Pi』

※1 アルスプラウトは株式会社ワビットの登録商標です。

※2 本ソフトウェアの一部の機能は無料でも使用できますが、「標準制御」などの基本 機能を利用するためにはライセンス料をワビットに支払う必要があります。「アル スプラウト」のDIYキットにはライセンス料が含まれており、すでに導入している 利用者は本ソフトウェアを無料でダウンロードし全ての機能を利用できます。

※3 主催:アグリジャーナル(株式会社アクセスインターナショナル)、2021年3月 31 日まで出展。

※4 機器の設置、電気工事は専門業者への委託が必要。有資格者以外の電気工事は法律で禁止されています。

※5 基幹的農業従事者数。農林水産省の2020年農林業センサスによる。

※6 同程度の制御を行う場合の計測機・制御盤購入費、当社調べ