一本ネギ『初夏扇2号』の画像

 サカタのタネは、4月下旬から5月上旬でも花芽(ネギ坊主)が上がりにくく、高品質な青果を生産できる一本ネギ『初夏扇2号』の種子を営利生産者向けに発売します。

『初夏扇2号』は晩春・初夏どり用の一本ネギで、最大の特長は花芽の上がりが非常に遅い極晩抽性品種である点です。ネギは冬の低温に当たり、その後日長変化や温度上昇などで花芽が上がる性質がありますが、花芽が上がったネギは固くなり、出荷できなくなります。4月下旬から5月上旬までは一般的な晩抽性品種においても抽苔時期にあたり、一本ネギにおいて最も生産が不安定な時期です。一方、例年この時期はネギの価格が高騰するため、極晩抽性品種は生産者の収益の上で大きなメリットがあります。当社では従来「初夏扇」が最も晩抽性のある一本ネギ品種でしたが、『初夏扇2号』はさらに5~7日程度遅く、高価格時期の安定生産が期待できます。

 
また、晩抽性品種としては、耐暑性と在圃性があることも特長です。冬に生育する品種である春・初夏収穫用のネギは、温度上昇に伴い収穫期後半に伸び過ぎたり太くなり過ぎたりしやすく、在圃性に課題がありました。『初夏扇2号』は晩抽性品種の中では暑さの中でもじっくり生育するため、締まりよく品質のよい一本ネギを生産できます。さらに、1)葉身部(ネギの緑色の部分)が短いため倒れや葉折れ※1が少なく土寄せ作業などが容易、2)皮をむきやすく出荷調整作業がしやすい—ことから作業性にも優れます。昨今は生産現場の労働力不足が問題となっており、作業性のよい品種は生産者にとって重要なポイントです。
 
ネギ『初夏扇2号』の種子の希望小売価格※2は1dl入り袋11,440円(税込)、ペレット種子6,000粒入り袋7,755円(税込)で、3年後の販売目標は6,000万円です。全国のJA、種苗店を通じて2021年8月から販売します。

ネギの端境期に安定生産、極晩抽性の一本ネギ『初夏扇2号』

ネギは古くから日本で親しまれている野菜の一つで、古くは「日本書紀」で記述が確認できます。現在、流通量が最も多いのは一般的に旬とされる秋冬ですが、用途の幅広さや加工・業務需要の高さなどから一年中生産されている品目です。

一年の中で、ネギの花芽が上がる時期である4月下旬から5月上旬は価格が急激に上昇します。花芽が上がってしまうと多くの産地では規格外となり、市場に出回る量が減少するためです。『初夏扇2号』は当社品種の中で最も晩抽性に優れた品種で、高値になりやすい端境期での安定生産で生産者の収益に大きく貢献します。加工業者や飲食店、スーパーマーケットなど小売店、消費者にとっても花芽が上がりやすい時期に品質のよいネギが手に入ることは大きなメリットであり、『初夏扇2号』が国内のネギの安定流通に貢献することを期待しています。

赤線奥:他社従来品種、赤線前:『初夏扇2号』
他社従来品種はネギ坊主が多く上がっているが、『初夏扇2号』はほとんど上がっていない
鹿児島県 2015年4月30日撮影

暑さの中でもじっくり生育する『初夏扇2号』

左:他社従来品種、右:『初夏扇2号』

初夏収穫のネギは暑さで生育が停滞し、内部に空洞ができることが多い。『初夏扇2号』は暑さの中でも生育するため、締まりがよく重量感のあるネギを収穫できる。
(写真提供 鳥取県園芸試験場弓浜砂丘地分場 2015年調査資料より)

ネギ『初夏扇2号』作型図(関東標準)

ネギ『初夏扇2号』作型図(関東標準)

※1 葉折れ:
ネギは生育するにつれて葉が伸びるが、品種によっては強風により葉が折れやすい。葉が折れると土寄せ作業がやりにくくなるなど作業性に影響する。

※2 価格はすべて希望小売価格(税込)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません