チンゲンサイ『翠勲(すいくん)』の画像

サカタのタネは低温伸長性に優れ生産者の安定生産に貢献するチンゲンサイの新品種『翠勲』(=写真=)の種子を営利生産者向けに2021年6月下旬より発売します。

『翠勲』最大の特徴は、厳寒期における低温伸長性です。チンゲンサイは1年を通して生産される野菜の一つで、周年栽培する産地も多く存在しますが、冬季栽培では、低温による生育遅延が課題となっています。『翠勲』は低温下でもしっかり生育するため、冬場の安定出荷に貢献します。また、寒さが厳しい地域のチンゲンサイ栽培ではボイラーなどでハウス内を加温して生産することがありますが、低温伸長性に優れる『翠勲』は他品種に比べてハウス内の設定温度を下げることもできるため、加温にかかる燃料費の節約につながり、生産者の収益向上が期待できます。また芯が柔らかいため収穫作業性に優れ、尻部(軸下部)は極端に張り過ぎない形状のため、袋詰め作業がしやすいことも特徴です。低温多湿時期の栽培では白さび病※1の発生が問題となりやすいですが『翠勲』は白さび病と萎黄病※2への耐病性※3があり安心して栽培できます。クセがなく歯切れもよいため、食味にも優れる品種です。

チンゲンサイ『翠勲』の種子の希望小売価格※4は、1袋20ml入り1,672円(税込)、1袋2dl入り16,500円(税込)、ペレットシード缶5,000粒入りで4,070円(税込)、3年後の売り上げ目標は2,000万円です。全国のJA、種苗店を通じて2021年6月下旬より販売します。

チンゲンサイにおける厳寒期の低温伸長性品種の重要性

チンゲンサイは年間を通じて需要があり、周年栽培を行う産地も多い品目です。冬の栽培では基本的にハウス栽培を行いますが、1)寒さの影響で生育が遅くなり、出荷までに時間がかかる、2)寒さが厳しい地域では暖房器具でハウス内を加温するため生産コストが上がる—といった課題があります。『翠勲』のような低温伸長性のある品種は寒さの中でも早く生育し、収穫までの生育期間が短くなるため、圃場の回転も速く効率的な生産が可能です。さらに、他品種と比べてハウス内の温度を下げても生育するため、重油代などの生産コスト削減に寄与することも期待できます。当社チンゲンサイの中でも特に低温伸長性に優れた『翠勲』の栽培によって、生産者の収益向上につながることを期待しています。

写真:左から2番目が『翠勲』、ほか従来品種
千葉県無加温ハウスでの栽培
(2021年2月17日撮影、播種は4品種とも同日)
『翠勲』が一番大きく成長している

収穫作業性に優れた草姿と特徴

チンゲンサイは収穫時、地際ぎりぎりで尻部(軸下部)をカットする必要がありますが、尻部が土にめり込むような下膨れした草姿の場合、ナイフが入れにくく、本来残すべき葉まで切り落とし出荷サイズを落としてしまうことがあります。『翠勲』は下膨れの少ないスリムな尻部であるため、ナイフが入れやすく収穫作業の効率化と収量の確保に貢献します。また芯も柔らかいため、少ない力でカットすることができ、収穫時の負担を軽減します。

チンゲンサイ『翠勲』作型図

チンゲンサイ『翠勲』作型図

※1 白さび病:
春や秋の低温多湿条件下で発生しやすく主に葉の表と裏に盛り上がった白い斑点が発生する。

※2 萎黄病:
典型的な症状は葉脈を中心とした葉の黄化と萎凋で、導管部は褐色~黒変する。病状が進むと枯死に至ることもある。

※3 抵抗性と耐病性:
当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくく安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受け易いが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。

※4 価格はすべて希望小売価格(税込)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。