• 生物多様性条約に基づいた遺伝資源利用、相互契約に基づいた利益配分

  • 配分した利益は生物多様性の保全に貢献、持続可能な循環型遺伝資源開発モデル

  • アルゼンチンの遺伝資源により白花品種を開発

『Viking White on Green』(バイキング ホワイト オン グリーン)

サカタのタネは、真夏の暑さや乾燥に強い大型の種間雑種※1ベゴニア「バイキング」シリーズの新品種『Viking White on Green』(バイキング ホワイト オン グリーン)を欧州では2022年11月、アジアでは2023年6月から販売予定です。日本、北米、南米での販売は未定です。

『Viking White on Green』は、生物多様性条約(Convention on Biological Diversity、以下CBD)に基づき、アルゼンチン国立農牧技術院(Instituto Nacional de Tecnologia Agropecuaria、以下INTA)から導入された遺伝資源を利用して育成した品種です。「バイキング」シリーズにはこれまで白花の品種がなく、同シリーズのほかの品種と同等の性質を持たせるため育種に長い歳月をかけてきましたが、今回、INTAの遺伝資源を利用したことで白花品種を作出できました。

『Viking White on Green』の売り上げの一部は、遺伝資源へのアクセスと利益配分の契約(Access and Benefit-Sharing、以下ABS)に基づき利益配分し、アルゼンチン(INTA)に還元します。アルゼンチンでの遺伝資源探索は2004年から開始し、INTAとサカタのタネはCBDに基づいた共同調査を続けています。今後も遺伝資源の利活用についてよりよい協力体制を構築する努力を続け、人類のかけがえのない財産である生物多様性の保全と活用に貢献するとともに、持続可能な品種開発を続けてまいります。

生物多様性条約とサカタのタネの取り組み

当社ではこれまでも生物多様性条約(CBD)に基づいた商品の開発に努めてきました。

2006年5月に発売した「サンパチェンス®」は、インドネシア農業研究開発庁(Indonesian Agency for Agricultural Research and Development、以下IAARD)と共同で開発した園芸用草花で、インドネシア国内に自生するインパチェンス属の野生種を育種素材として利用しています。同庁とサカタのタネは2000年代初頭、この野生種の利用に関する基本合意をしており、サカタのタネはCBDに基づいて同国の遺伝資源を利用してきました。

2007年11月に発売されたオオバコ科の園芸用植物メカルドニア「イエロークロサイト」(現在は販売を終了)は、INTAとの植物遺伝資源探査事業に基づき探索され、共同開発した草花です。

これらの商品の販売利益の一部はそれぞれの資源保有国に還元しています。共同での探索と評価、そこで得られた遺伝資源を元にした商品開発と販売を経て、そこから生まれた利益を資源国に配分していく循環型の遺伝資源開発モデルは資源保有国からも高く評価されています。このCBDに基づく園芸植物の開発と利益配分は日本企業として初の事例となり、世界的に注目を集めました。

利益配分には、ロイヤリティーの支払いだけでなく、探索や評価のノウハウや技術協力など非金銭的なものも含まれています。これがさらなる探索の原資となり、同国の生物資源の保全にも役立てられています。

双方に利益のあるWin-Winの関係を構築することで、持続的にこの車輪を回し、今後も新たな商品を開発していきたいと考えています。

「サンパチェンス オーキッド」

「サンパチェンス オーキッド」※2 

メカルドニア「イエロークロサイト」

メカルドニア「イエロークロサイト」

気候変動への対応と大規模植栽への期待

「バイキング」シリーズ 中国での植栽の様子

「バイキング」シリーズ 
中国での植栽の様子

温暖化により夏の暑さは年を追うごとに厳しくなっており、夏向きの園芸草花(花壇苗)には猛暑の中でも十分に生育できる強健さと美しさを兼ね備えることが求められています。

また、近年、観光施設などで一面に咲く花畑が人気を集めており、レジャーとして園芸を楽しむという新しい価値が生まれています。施設の集客力にも直結するため花を使った大規模植栽の需要が増え、花壇苗の利用シーンの幅が広がっています。

ベゴニア「バイキング」シリーズは耐暑性だけでなく、耐乾性にも優れることから、公園などの大規模な植栽にも適しており、新たな観光名所を生み出す可能性に期待しています。

  1. 種間雑種:種内の品種間には見いだせない形質をほかの種から導入するため、異なる種間で交雑を行うこと。

  2. 本品種は登録品種です。登録品種の最新の登録状況はサカタのタネウェブサイト(https://www.sakataseed.co.jp/ip/)でご確認ください。サンパチェンス オーキッド 登録品種 品種名:SAKIMP053 海外持出禁止(農林水産大臣公示有)