• サカタのタネとアルスプラウト株式会社が「Arsprout Air」(アルスプラウト エア)を共同開発

  • 電池式で、電源のないハウスでも利用可能

  • ノード間の無線通信可能で、複数ハウスのモニタリングを低コストで実現

アルスプラウト エア

サカタのタネは、アルスプラウト株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:戸板 裕康、以下、アルスプラウト社)の低コスト環境制御システム「アルスプラウト」のモニタリング向け新モデル「Arsprout Air」(以下アルスプラウト エア)を、同社と共同開発しました。

「アルスプラウト」は低コストかつ機能選択の自由度の高さが特長の環境制御システムです。従来製品は、使用の際に電源が必要でしたが、「アルスプラウト エア」の子機は電池式のため、電源を敷設していないハウスや露地でも使用できます(親機はソーラー電池、もしくは電源が必要)。また、「アルスプラウト エア」は、子機(ハウスごとに設置し、各センサーからの情報を集める)と親機(子機からの情報を集め、クラウドに送る)を無線でつなぐことができるため、有線接続が難しいハウスや圃場でも、子機ごとにモバイル回線を契約せずに利用できます。無線には低速度低電力広範囲通信規格(LoRa)を使用しており、障害物がない場合は1km範囲でデータを親機に送ることが可能です。特にハウス複数棟にモニタリング目的で導入する際に、通信費削減などのメリットがあります。

農業において、環境データを集め、分析することは、収量増や省力化などのために非常に重要です。また、モニタリングによってハウス内の温度異常や機器のトラブルの警報を受け取り、リスク回避もできます。

「アルスプラウト エア」は、2024年1月11日から全国の種苗店、農業資材店、JAなどを通じて発売します。アルスプラウト社からも購入できます。価格はオープンです。

農業の担い手減少-注目を集めるスマート農業と「アルスプラウト」

アルスプラウト農場イメージ

日本の農業従事者数は約116 万4千人です。担い手減少の中で、労働力確保、限られた生産者への農地集約など、生産現場では「省力化」が重要なキーワードとなっています。解決策の一つとして注目を集めるのが、ロボット技術やICTを活用して省力・高品質生産を目指す「スマート農業」です。その市場規模は2025年度には日本国内で400億円超(予測値)になるとの試算もあります(※1)。

市場拡大が期待される一方、日本国内の施設園芸(ハウス、ガラス温室)において、複合環境制御装置(環境制御システム)を導入しているのは全体の2.9%とされます(※2)。環境制御は施設園芸における「スマート農業」の代表的な技術の一つですが、現状は大多数の生産者が導入できていません。理由の一つには、日本では中小規模の生産者が多く、その経営規模から高額なシステムの導入がなかなか進まないことが考えられます。株式会社ワビット(※3)が2018年に開発した「アルスプラウト」は、DIY 型でかつ自由度が高く、生産者の実情に合わせて機能を取捨選択できます。そのため、中小規模の生産者では一般的な環境制御システムと比べ、約半額から半額以下(※4)の低コストで導入でき、発売以来販売数を伸ばしています。

アルスプラウト 特設サイト https://www.sakataseed.co.jp/special/arsprout/

  1. 出典:株式会社矢野経済研究所「スマート農業に関する調査(2023年)」(2023年11月22日発表)。事業者売上高ベース。市場規模には、農業向けPOSシステム、農機・ドローンなどのハードウェア本体は含まれていない。

  2. 農林水産省「施設園芸をめぐる情勢」(2023年4月)

  3. 2021年4月30日付で株式会社ワビットがアルスプラウト株式会社にスマートアグリ事業を譲渡

  4. 同程度の制御を行う場合の計測機・制御盤購入費、当社調べ

「スマート農業」のファーストステップ 栽培環境のモニタリング

「スマート農業」といえばロボット農機や環境制御などをイメージする方が多いですが、栽培環境をデータとして可視化し、分析、活用することがファーストステップです。

植物は、気温や水、日照など、環境による影響を大きく受けて生育します。栽培が成功したとき、あるいは問題が起きたとき、因果関係を調べ、次の栽培に生かすためには、栽培環境のモニタリングとデータ活用が重要です。また、客観的なデータを用いることで、従業員への指示、後継者への技術承継、専門家からの指導を効率的に行えます。

栽培環境をスマートフォンなどでどこからでも確認でき、生産者の負担軽減にもつながります。実際に、「アルスプラウト」をモニタリングに使用している生産者からは「出かける際にハウス環境への不安が減った」など評価されています。「アルスプラウト」は、異常を感知した場合にスマートフォンなどで警報を受信する機能もあるため、窓の開閉忘れなどヒューマンエラーや急激な気温の変化に対する備えにもなります。

植物×システム開発 両分野のプロフェッショナルが協業する「アルスプラウト」

環境制御システム「アルスプラウト」の最大の特長は、システム開発会社であるアルスプラウト社と植物栽培を熟知している当社が協業している点です。当社は、研究農場で実際に「アルスプラウト」を使いながら、栽培現場で必要とされる機能をアルスプラウト社へフィードバックします。アルスプラウト社は、この情報を参考にシステムの改良を行っています。「アルスプラウト エア」も両社のこうした取り組みにより開発しました。また、導入後も当社より各種セミナー開催、問い合わせ対応などのサポートを行っており、栽培全般のアドバイスを受けることができます。