キャロルポポ

サカタのタネは、夏の高温期でも安定した量と高品質な青果を収穫でき、食味、作業性もよいミニトマト「キャロルポポ」を開発し、2024年11月下旬から種子を発売します。

キャロルポポ」は特に夏秋栽培に適した品種で、最大の特長は食味、安定した樹勢(スタミナ)と収量性です。ミニトマトは高温環境下では樹が弱って花が少なくなり、その結果、収量が大きく低下することがあります。特に近年、猛暑日の増加により、品種によっては樹勢の低下が顕著になり、栽培後半(9月以降)の収量に影響が出るようになってきました。「キャロルポポ」は夏の暑い時期でも樹勢を維持できるほか、花粉の稔性(受精能力)が落ちにくいこと、青果が割れにくいこと、果実サイズがそろうことから、安定した生産が可能です。また、果肉が厚いため果実も軟らかくなりにくく、出荷時の青果品質はもちろん、流通先での棚持ちや食味のよさに寄与します。

ミニトマトは1本の樹に多くの実がなるため、作業性も非常に重要です。「キャロルポポ」は花が多すぎず、花数を調整する摘花作業が軽減できます。また、裂果や軟果に対して強いことで作業計画に余裕を持つことができ、さらに、収穫できる果実の高さがそろっていることで、収穫作業の負担軽減にもつながります。

キャロルポポ」はミニトマトの栽培で問題となる病害(萎凋病(F:R-1)、ToMV(Tm-2a型)、葉かび病、斑点病)への抵抗性(※1)があります。また、果皮が薄く、甘みと酸味のバランスがよく、食味にも優れる品種です。

ミニトマト「キャロルポポ」の種子の希望小売価格(※2)はプライマックス種子1袋1,000粒入りで29,645円(税込)です。全国のJA、種苗店を通じて発売します。

■ミニトマトと夏秋栽培の課題

ミニトマトの月別卸売平均価格(東京都中央卸売市場)
東京都中央卸売市場 市場統計より作成

ミニトマトはサラダや弁当など、日常生活でも利用シーンの多い野菜の一つです。家庭菜園では夏から秋にかけて収穫するため、夏野菜の印象を持つ方が少なくないですが、夏や秋口の高温はミニトマト栽培にとって大きな課題の一つとなっています。実例として2023年9~10月は、高温による生育不良でミニトマトの市場価格が急騰しました。

高温期のミニトマトは、樹が弱って花が少なくなる、花粉の稔性(受精能力)が低下して着果しなくなる、といった着果不良の問題や、果実が割れる、軟らかくなる、といった青果物の品質低下の問題があります。「キャロルポポ」はこれら両方の課題改善に寄与します。

なお、「キャロルポポ」は特に夏秋栽培に向く品種ですが、抑制、促成栽培の作型でも栽培可能です。

■ミニトマトと収穫作業性について

日本国内のミニトマトの作付面積は2,690ha(作物統計調査、2022年)。この20年で大きく面積が増えている品目の一つです。その背景には、生産者目線では販売価格が安定しており経営計画が立てやすく、消費者目線では包丁を使わずに簡単に食べられることから手に取りやすく、今後も安定した需要が予想されます。

一方、ミニトマトは大玉トマトと比べて、1本の樹から数多くの実を収穫する品目です。収穫には多大な労力が必要となり、今後の安定生産や生産拡大に向けて、収穫作業性のよさが重要なポイントとされます。特に、まだ実が青い状態でも収穫できる大玉トマトとは異なり、ミニトマトは熟して赤くなった状態で収穫・出荷する必要があるため、温度が高い時期に収穫が遅れると、すぐに裂果(果実が割れること)や軟果(果実が軟らかくなること)につながります。

キャロルポポ」は裂果や軟果に強く、実際に「キャロルポポ」を試作した生産者からも、安定した品質のよさが高く評価されました。

■「キャロルポポ」の由来

当社では丸いタイプのミニトマトに、「ミニキャロル」「キャロル10」「キャロルムーン」など、それぞれ「キャロル」という名前を付けています。「キャロルポポ」は、「花が安定してポンポンつき、食味がよくポンポン食べられる」ことから、「キャロル」と「ポポ」を合わせて命名しました。

  1. 抵抗性と耐病性:当社は病害を抑える性質をその程度により「抵抗性」と「耐病性」という言葉で表しています。発病条件(温度、湿度、病原体の密度など)の影響を受けにくく安定したものに「抵抗性」を用いています。「抵抗性」は基本的には発病しませんが、発病を助長する厳しい条件や病原菌のレース分化・変異により発病する場合もあります。「抵抗性」に比べ発病条件の影響を受けやすいが、感染しても発病の程度が軽かったり、栽培する上で問題になりにくいものには「耐病性」を用いています。

  2. 価格はすべて希望小売価格(税込)です。価格の自主的な決定を拘束するものではありません。