株式会社サカタのタネ(社長:坂田宏、本社:神奈川県横浜市、以下サカタのタネ)と佐瀬農園(代表:佐瀬昇氏、所在地:千葉県東金市)は、「日持ちと輸送性に優れたトルコギキョウ開発」により、「令和6年度農事功績者表彰事業」において「農業技術開発功労者 名誉賞状」を受章しました。表彰式は2024年11月14日に行われました。同表彰は公益社団法人大日本農会が主催し、農事改良の奨励または実行上功績顕著な者、農業上の有益な発見または研究を行い、功績が顕著な者に対して贈られます。明治27年(1894年)に始まり、今年(令和6年度)で第108回を迎えました。
当社は佐瀬氏との共同研究で「アンバーダブル® モヒート」(=写真=)など、変形雌ずい(※1)を持つ多様なトルコギキョウを開発、また、世界初となる雄性不稔(※2)を利用した花粉の出ないトルコギキョウを開発し、特に夏の高温期など日持ちが悪くなる季節でも、切り花を長く楽しめることを可能にしました。今回の表彰では、これらの研究が世界各国でのトルコギキョウの切り花生産・消費拡大に寄与し、ひいては農産物輸出促進にも多大な貢献をしたことが評価されました。
・受章者
森 一俊(サカタのタネ 研究本部課長 兼 三郷試験場副場長)
佐瀬 昇(佐瀬農園 代表)
堀内慎吾(サカタのタネ 掛川総合研究センター 育種4課 主席研究員)
西尾 章(サカタのタネ 三郷試験場 研究員)
業績概要
表彰事由 日持ちと輸送性に優れたトルコギキョウ開発
変形雌ずいを持つ多様なトルコギキョウ、また世界初となる雄性不稔を利用した花粉の出ないトルコギキョウを開発し、特に夏の高温期など日持ちが悪くなる季節でも、切り花を長く楽しめることを可能にしました。その結果、世界的なトルコギキョウの切り花生産拡大、消費拡大に寄与し、現在トルコギキョウはヨーロッパをはじめ世界各国で主要な切り花品目の一つとして栽培されています。
付加価値のあるトルコギキョウを目指して
当社がトルコギキョウの開発を開始したのは、1970年代のこと。1981年に世界初のF1トルコギキョウを開発したのを皮切りに、これまでに数々の革新的な品種を開発してきました。現在はトルコギキョウのリーディングカンパニーとして、国内外で高いシェアを持っています。
トルコギキョウは、もともと夏の花であるため比較的暑さに強く、ほかの切り花に比べると夏場の花持ちがよいことが知られています。花は一般的に、雌しべの先に花粉が付着すると老化が進むと言われており、観賞期間が減少します。佐瀬昇氏との共同開発によって誕生した変形雌ずいタイプ「アンバーダブル」シリーズや当社が開発した無花粉タイプ八重咲きの「PF ダブル® スノー」、無花粉タイプ一重咲きの「ソロ® PF」シリーズはいずれも受粉しにくい花の構造を持っています。そのため花持ちが非常に優れ、長時間の輸送に耐えることができ、消費者は長く花を楽しめます。
引き続き、当社ではこれらの性質を新たな花型や花色、花径の品種にも付与していき、日持ちと輸送性に優れた魅力的な品種を開発し、世界中の消費者にトルコギキョウの魅力を伝えていきたいと考えています。さらには、花き業界における日本の技術開発力のアピールとともに、国内生産額および輸出の拡大につながることを期待しています。
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変形雌ずい:雄しべが成熟しても雌しべの先端が開かないため受粉しにくい状態。これを利用し、佐瀬昇氏とサカタのタネの共同開発で、花弁の質感が独特で花持ちがよいトルコギキョウ品種「アンバーダブル」シリーズなどを開発しています。
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雄性不稔:本来一つの花の中に雄しべ、雌しべがあるべきところ、雄しべがなかったり、雄しべがあっても花粉が生成されなかったりして生殖能力がないこと。この形質を利用しての育種について特許を取得しています(特許第5841263号)。