株式会社サカタのタネとその関係会社(以下、「当社グループ」という。)は、「生き物」である種苗を主要販売商材とし、自然を相手にする事業の性質上、天候・自然災害リスク、育種開発リスク、知的財産権の侵害リスクをはじめ、さまざまなリスクにさらされております。これらのリスクは予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、重要性の観点から取上げたもので、すべてのリスクを網羅した訳ではありません。現時点では想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。記載事項のうち将来に関する事項は、現在入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものです。

(1)天候・自然災害リスク

当社グループの主要販売商材である「種苗」の生育は天候に大きく左右されるため、天候状況は販売および生産に影響を与えます。まず販売面では、暴風雨などの自然災害や天候不良による不作などは生産者の活動に影響を与え、当社商材の販売が減少するリスクがあります。販売地域を世界170カ国以上に広げたり、厳しい生育環境にも適応する品種を開発することなどによりリスクの軽減に努めていますが、世界的に異常気象は増加傾向にあると認識しており、各地における天候不良は売上の低迷をもたらす可能性があります。また、商品種子の生産については、天候不良により充分な品質や数量を確保できないリスクや生産コストが上昇するリスクがあります。このため世界19カ国に生産を分散し、かつ同一地域でも複数の種子生産者にその生産を委託してリスク分散を図っているほか、一定量の安全在庫を保有することとしております。しかしながら、特に主要な産地において播種期から採種期までに大規模な天候変化や自然災害が生じた場合、欠品による売上減少や生産コストの大幅な上昇など、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2)育種開発リスク・知的財産権の侵害リスク

育種開発リスクとしては、育種目標を設定してから10年以上を必要とする育種開発の性格上、投資コスト負担リスク、開発実現性リスク、商品ニーズが変化してしまうリスク、他社との開発競争リスク、新規育種技術の普及により参入障壁が下がり開発競争が激化するリスクなどがあります。さらに、育種研究者であるブリーダーが社外流出することにより、担当する品種の育成に障害が出て良質な商品の完成が難しくなるリスクや、遺伝資源の流出により模倣品が出回り知的財産が侵害されるリスクを有しております。当社グループでは、育種工学の拡充や社外研究機関との連携などを含めた研究開発体制の整備、開発者に対する報奨制度の導入やチーム体制での育種の採用、種苗法に基づく品種登録や特許などを用いての知的財産権保護などを行っておりますが、急激に需要が変化した場合や強力な他社品種が出現した場合などは、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3)保有資産の価値変動リスク

当社グループはさまざまな資産を保有しておりますが、定期的な不動産の現状確認や政策保有株式に関する社内規程整備などの管理体制を構築し、適切な評価・管理に努めております。しかしながら、土地や有価証券などの資産価値が急激に下落した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。また、『(1) 天候・自然災害リスク』にて記載したとおり、商品種子の生産は天候条件に大きく左右されるという当社グループの事業の特性上、顧客への安定供給責任を果たし、事業を安定的に継続するための安全策として、たな卸資産である種子を一定量確保しているため、種子の品質低下や商品の需要変化などにより、たな卸資産の廃棄・評価損が増加するリスクがあります。品質や販売動向に基づき定期的に評価の見直しを行っておりますが、生産や販売実績が計画から大きく乖離した場合などには、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(4)品質と安全性に関するリスク

当社グループでは、創業者坂田武雄の唱えた社是「品質・誠実・奉仕」にのっとり、品質と安全性に対する信頼を最重要課題のひとつと位置づけ、品質管理部を設け当社の品質基準に照らした商品チェックを行うと同時に、お客様相談室を設けるなどして商品クレームに適切に対応できる体制を採っております。しかしながら、「生き物」である商品の性質上、品質の水準や均一性などに不測の事態が生じるケースや、種子に由来しない環境や生産技術面からのリスクが発生し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(5)カントリーリスク

当社グループは、生産・研究開発・販売拠点として、日本を含めて全世界で22カ国に事業展開を行っております。うち、農場および研究施設として、国内5カ所、海外で11カ国14カ所に拠点を持っております。これらの事業展開地域の一部においては、次のようなリスクが内在しております。
a. 予期しない法律または規制の制定または改廃
b. 政治・経済の混乱
c. テロ・紛争の発生などによる社会的混乱
d. 地震などの天変地異の発生
e. コンピューターウイルスや諸情報の漏洩など、情報化に伴う問題の発生
グローバルに事業を展開することで、販売や生産のリスク分散が図れるメリットはありますが、一定の地域において何らかのリスク事象が生じる可能性が高まる面もあります。拠点展開先の各国からは、常に情報を早期に収集し、迅速な意思決定ができるように、経営やリスク管理体制の強化を図っておりますが、これらの事象が発生した場合、当地での事業の継続、需要の大幅な低下、種子生産から撤退などのリスクがあり、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(6)為替変動に関するリスク

当社グループは海外各地において商品を生産・販売しており、各地域において現地通貨にて作成された財務諸表は、連結財務諸表作成のために円換算されております。このため、為替相場の変動は、現地通貨における価値に変動がなかったとしても、業績に影響を与えます。また、当社グループが原材料および商品の一部を調達あるいは輸出している海外との取引は、為替変動の影響を受けます。こうした影響を最小限に止めるべく、当社グループでは通貨別金額の変化に常時注意を払っており、適切な管理体制の下、先物為替予約取引や通貨オプションなどを活用し、リスクの軽減に努めております。しかしながら、予測を超えて急激に為替レートが変動した場合などには、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(7)取引先の信用リスク

当社グループでは、国内外のさまざまな顧客や仕入先との取引を行っており、売掛金、前渡金などの信用供与を行っております。当社グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定、貸倒引当金の計上など、信用リスク管理のための施策を講じておりますが、取引先の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(8)新型コロナウイルス感染症拡大リスク

新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に伴い、人・モノの移動制限や各国の景気動向は、種苗業を含む農園芸市況にも影響を及ぼしております。

当社グループの事業における主要なリスクとしては、下記のようなものが挙げられます。
a. 世界的な景気後退により、花・野菜の消費が減少するリスク
b. 人の移動制限により、観光客やイベントが減少し、その結果として花の需要が減少するリスク
c. 野菜や花の生産現場で、労働力不足などにより作付けそのものが減少するリスク
d. 物流の混乱により、タネまきの適期に種子が産地に届けられないリスク
e. 販売先信用リスク
f. 新興国通貨の為替リスク
当社グループでは、社長を委員長とする危機管理委員会を2020年2月に立ち上げ、ステークホルダーの安全確保と食料生産を支える種苗の供給責任を果たすことを最優先課題として、取り組んでおります。

会計上の見積りにつきましては、2022年5月期後半にかけて徐々に沈静化するとの仮定を置いております。当社グループでは、このような仮定のもと、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき、たな卸資産の評価、固定資産の減損会計および繰延税金資産の回収可能性などの会計上の見積りを行っております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の終息時期は依然として不透明であり、最終的な影響については予測が困難な面もあります。前述の仮定から状況が悪化した場合には、当社グループの業績に悪影響を与えるリスクがあります。