気候関連情報開示のフレームワーク(TCFD)への対応

株式会社サカタのタネとその関係会社(以下、「当社グループ」という。)は、気候変動対応を重要な経営課題の一つと捉えており、2023年8月にTCFD提言に賛同しました。気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会を分析し、経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、その進捗を適切に開示することで、脱炭素社会の実現に貢献し、さらなる成長を目指します。

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ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ基本方針のもと、社業である種苗事業や緑花事業を通じて、社会や農園芸業に貢献し、ステークホルダーが共に発展するサステナビリティ経営の実現に向け取り組みを進めています。さらに、サステナビリティ経営を促進すべく、2023年6月、サステナビリティ委員会を新設しました。代表取締役社長を委員長とし、常務執行役員、本部長をメンバーとして、その審議結果については、取締役会へ定期的に報告をおこなっています。事務局機能は、組織横断のメンバーによる推進プロジェクトチームが担い、委員である常務執行役員のうち1名がプロジェクトリーダーとなって諸課題に対する具体的な取り組みを進めています。

サステナビリティ全般に関するガバナンス体制図

戦略

当社グループでは、サステナビリティ委員会を中心に気候変動シナリオの分析を行い、事業活動に際し多大な影響を及ぼす可能性があるリスクと機会を特定し、カテゴリー分類、重要度評価等を進めるとともに、その財務的な影響を把握し、対策の検討を開始しました。
なお、IEA(国際エネルギー機関)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等が公表している「2℃未満シナリオ」、「4℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、気候関連リスクと機会、事業インパクトを分析しています。記載の試算影響額については、移行リスクは「2℃未満シナリオ」、物理リスクは「4℃シナリオ」を採用しています。

リスクと事業インパクト

分類

種類

リスク

事業および財務への影響

重要度

試算額
(百万円)

対応策

移行
リスク

政策・法規制

炭素税の導入等、新たな租税公課の導入

各種エネルギー(原油、灯油、電気等)の使用に伴う課税による操業コストの増加

△119.4

・再生可能エネルギーの活用
・エネルギー効率の改善
・省エネ設備やシステムの導入の実施

移行
リスク

政策・法規制

プラスチック等の使用規制

バイオプラスチックや代替素材への移行に伴うコスト増

・環境配慮商品や環境認証取得商品の開発
・素材の使用量の最適化

移行
リスク

政策・法規制

環境負荷のかかる商品の使用規制

農薬・化学肥料等の使用規制(使用量削減)による生産活動への制約

・農薬・化学肥料等の代替品の商品開発
・有機農業推進の支援

移行
リスク

技術

低炭素技術への転換

環境負荷低減に繋がる新たな低炭素農業への移行によるコスト増

・エネルギー効率の向上を図るための農業施設の更新
・適切な資金援助制度の活用
・持続可能な農業にむけた生産者支援の推進

移行
リスク

市場/評判

環境負荷のかかる商品への需要減

環境負荷のかかる商品の売上減

・環境負荷の低い商品の開発・普及

物理的
リスク

急性

豪雨、洪水、高潮、土砂災害、干ばつ、局地的大雪等、異常気象の増加

自然災害発生による建物・研究施設の損壊、サプライチェーン寸断等に伴う事業活動縮小、営業機会の損失

△9.6

・災害リスクの評価と予防策の強化
・建物や研究施設の耐震化と防災対策
・サプライチェーンにおける種子の適切な在庫確保・管理

物理的
リスク

急性

豪雨、洪水、高潮、土砂災害、干ばつ、局地的大雪等、異常気象の増加

天候不順、土壌劣化、渇水等による種子生産等の作付け困難・成長不良・腐敗、採種量の減少・種子の品質低下

・耐候性の高い品種の開発
・土壌改良
・持続可能な水資源管理

物理的
リスク

慢性

平均気温の上昇、降雨、渇水等の気象変化、海面上昇等、地球環境の変化

耕作可能な土地面積の減少による種子生産量の減少

・耕作可能な土地の最適利用
・耐候性の高い品種の開発

物理的
リスク

慢性

平均気温の上昇、降雨、渇水等の気象変化、海面上昇等、地球環境の変化

降水・降雪量の変化に伴う種子生産等に用いる水の不足

・持続可能な灌漑管理
・水資源管理の計画的な推進

物理的
リスク

慢性

平均気温の上昇、降雨、渇水等の気象変化、海面上昇等、地球環境の変化

平均気温上昇による農作物の成長不良、病害虫の増加等に伴う生産量の減少

・耐候性の高い品種の開発
・環境制御システムの導入
・持続可能な農業にむけた生産者支援の推進

ビジネスチャンス(機会)

分類

種類

事業および財務への影響

重要度

対応策

機会

製品サービス/
市場

<品種開発>
気候変動対応品種、高温でも栽培可能な品種、病害虫に強い品種、土砂災害対策植物の需要が高まり、当社商品への需要が増加する

・耐候性、耐病害虫性品種の開発強化

機会

製品サービス/市場

<ソリューション>
・環境負荷の低い商品への需要が増加し、省暖房、低農薬、少肥料品種や有機肥料、バイオスティミュラント資材等の売上高が増加する
・機械化・スマート農業に適した品種への需要が増加し、当社商品への需要が増加する

・省暖房、低農薬、少肥料で栽培可能な品種の開発強化
・有機肥料やバイオスティミュラント資材の取り扱い強化
・機械化・スマート農業適合品種の開発強化

機会

製品サービス/市場

<造園緑花>
都市部の緑花・園芸(壁面緑花、都市緑花)の需要が高まり、造園緑花部門の売上が増加する

・サカタのタネグリーンサービス(株)による造園緑花事業の取り組み強化

リスク管理

当社グループでは、「天候・自然災害リスク」、「育種開発リスク・知的財産権の侵害リスク」、「保有資産の価値変動リスク」、「品質と安全性に関するリスク」、「カントリーリスク」、「為替変動に関するリスク」、「取引先の信用リスク」等の各種リスクに関して、取締役会にて総合的に把握・評価するとともに、統合的に管理しています。

指標と目標

当社グループでは、2020年10月に、政府が宣言した「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた取り組みを進めるべく、温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2、Scope3)を気候関連リスクと機会を評価する指標の1つとして定め、グループ全体の温室効果ガス排出量算定に向けた取り組みを開始しました。また、サステナビリティ委員会において、当社グループにおける温室効果ガス排出量の算定を通じて、中長期的な温室効果ガス排出量削減目標について検討しています。
サカタのタネ単体の2021年度(2021年4月から2022年3月までの期間)における温室効果ガス排出量は、次の通りとなります。なお、グループ全体の温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)については、計測ならびに、削減目標策定に向けた検討を進めていきます。また、Scope3についても、今後計測に向けて検討を進めていきます。

温室効果ガス排出量(当社単体、実績)

区分

2021年度

 2022年度※3

 Scope1※1 排出量(トン)

2,664

計測中

 Scope2※2 排出量(トン)

3,848

計測中

Scope1 、Scope2 排出量合計(トン)

6,512

計測中

  • 1 Scope1:事業者自らによる燃料等の使用に伴う直接排出

  • 2 Scope2:他企業から供給された電気等の使用に伴う間接排出

  • 3 2022年度については計測中です。完了次第、随時、開示します。